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この録音は《メサイア》の「1741年初稿」に拠ります。「1741年初稿」とはヘンデルが1741年の8月から9月にかけて作曲・完成した稿のことです。その後、1742年ダブリン初演、1743年ロンドン初演、1745年ロンドン再演、1750年孤児養育院慈善演奏など、ヘンデルは何回も《メサイア》を演奏しますが、上演の度に改訂を加えており、結局、彼自身は「1741年初稿」どおりに演奏したことは一度もありませんでした。そして、ヘンデル没後も、今日に至るまで、「1741年初稿」は世界的にもほとんど演奏されることがありません。
では、「1741年初稿」と、以後の改訂稿との違いは何でしょうか? それは大きく次の二つの点です。
ひとつは、「1741年初稿」は管弦楽の編成が弦、トランペット2本、ティンパニ、通奏低音だけの、極めて簡素なものです。トランペットとティンパニはここぞという場面でのみ登場しますので、ほとんどの楽曲は弦と通奏低音だけの伴奏です。通常の《メサイア》演奏ではオーボエ、ファゴットが加わっていますが、これは後の改訂の折に加えられたものです。「1741年初稿」は簡素である分、響きは鋭く研ぎ澄まされ、まるで湖の底までくっきりと見透かせるように明澄です。「簡素な編成」は「貧弱な編成」とは違います。「1741年初稿」の編成は作品の壮大な世界を描くのに「必要にして十分な編成」なのです。この録音も独唱4名、合唱22名、管弦楽18名という小編成です。しかし、その演奏は十分な躍動感と力感にあふれている、と自負しています。
もうひとつは、後の改訂稿と比べて、「1741年初稿」は作品として最も一貫性があり、筋が通っています。演奏の度に繰り返された改訂はほとんどの場合、演奏現場での歌手事情に対応した、やむを得ないものです。希に、改訂により、一層素晴らしいアリアになった例もありますが、多くの場合、改訂は作品全体の一貫性や統一性を損ねる結果となっています。
「1741年初稿」は言わば改訂によって歪められる前の素顔の《メサイア》なのです。
本盤により、素顔の《メサイア》に触れてみていただければ幸いです。
2018年10月19日
指揮者:三澤寿喜
ヘンデル:オラトリオ《メサイア》「1741年初稿」全曲録音CD
2枚組 ALM RECORDS ALCD-9190, 9191
古楽演奏
定価3400円、消費税272円、送料1組=180円
ヘンデル・フェスティバル・ジャパン実行委員会事務局 ご注文・お問合せはこちらから>>
指揮 三澤寿喜 |
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キャノンズ・コンサート室内管弦楽団(古楽) バロック・ヴィオラ バロック・チェロ ヴィオローネ チェンバロ オルガン ナチュラル・トランペット バロック・ティンパニ |
キャノンズ・コンサート室内合唱団 アルト テノール バス |
第8回ヘンデル・フェスティバル・ジャパンの《エイシスとガラテア》公演のライヴCDが出来上がりました。 「歌唱者も器楽奏者もしかと心を通わせた《エイシスとガラテア》」(岸純信氏『音楽の友』3月号)と好評を博した公演の熱気あふれるライヴ録音です。
「・・・ガーディナー、クリスティらの名盤が覇を競う中に意義あるディスクが加わった。・・・三澤の指揮による劇場版でヘンデルの"英国音楽"の真髄に迫る
「ヘンデルの真髄へアプローチ。期待高まる日本での受容。解釈を深めた再演、真のヘンデル像・・・若手から中堅の演奏家を中心としたキャノンズ・コンサートは、管弦楽、合唱共に指揮者の意図が隅々まで徹底・・・」
「広瀬奈緒の声は美しく可憐・・・辻裕久の声はつやっぽくみやび・・・恋人同士の幸福感がまばゆく放射して聴き手を恍惚とさせる」喜多尾道冬氏(推薦)
「第8回ヘンデル・フェスティバル・ジャパンで行われたライヴなのだが、聴きに行かなかったのが大変残念だと思えた・・・日本人ヘンデル演奏の高水準を十分に示した価値ある録音だろう・・・」堀内修氏(準)
ヘンデル:『エイシス(アシス)とガラテア』HWV49a
2011年1月13日 浜離宮朝日ホールにてライヴ録音
2枚組本体価格 3,500円
消費税 280円
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