Handel Festival Japan

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2016年11月07日

「出演者からのコメント」シリーズ 第3弾 
石井賢(キャノンズ・コンサート室内合唱団団員[バス]、ポジティフオルガン提供&調律)

出演者の写真

Orgelmakerij van der Putten(オランダ)2004年製作の
ポジティフオルガンを提供します。

キャノンズ・コンサート室内合唱団にメンバーとして加わった最初期の回を除いて、これまでの公演のほとんどにポジティフオルガンを(時にはチェンバロも)提供してまいりました。ヘンデルフェスティバルジャパンのプロジェクトに、歌い手と鍵盤楽器の技術者の一人二役という、少し特殊な関わり方をしてもう10年ほどになります。 公演前の数日間の稽古中はもちろん、本番当日でも歌っていない時は鍵盤楽器を調律しているという具合なので関係者諸氏からいつも大いに労われていますが、歌い手・鍵盤楽器の技術者の別々の立場からヘンデルの多様な傑作の数々に取り組むことができることを毎回楽しんでいるところではあります。

公演の数か月前に楽譜が届いたら(自分が歌う)個々の合唱曲を確認するより前に、シンフォニーもアリアもレチも、すべての楽曲に目を通してそれぞれの調性をチェックし、そこから鍵盤楽器の調律法の素案を考えるのが、公演曲に対する私の最初のアプローチかもしれません。もちろん調律法は鍵盤楽器の都合だけでは決められませんから、事前に指揮者や器楽奏者に意見をもらったり、実際に稽古に持ち込んでから別の調律法に変えてみたり…。「メサイア」などが特に顕著ですが、ヘンデルのオラトリオの調性の選択・配列から一つのアイディアを導き出すのは一筋縄ではいきません。選択肢は多いようでいてその実かなり狭い道を通らなくてはならないといつも感じたりするのです。

調律法のことでは、今は亡きクリストファー・ホグウッド氏が指揮をした第7回の公演(2010年)のことを思い出します。オラトリオ「陽気な人、ふさぎの人、中庸な人」の第一部と第二部、「聖セシリアの祝日のためのオード」が演奏された公演では、あのホグウッド氏のことだから調律法の選択についても何か斬新な考えをお持ちではと思って事前に尋ねたらそのままこちらが逆質問され、慌ててそこでホワイトボードに数種の5度圏図を描いて「どれが良いと思います?」と選んでもらおうとしたことがありました。あの時は少し特殊だった第一案をあとで修正した記憶が蘇ってきました。

さて、このたびの「ベルシャザル」ではどのような段取りといたしましょうか。