8月28日(月)、HFJ専属チェンバロ奏者の平野智美さんと指揮者の三澤寿喜が東京古典楽器センターを訪れ、佐藤俊二さん立ち会いのもと、《テオドーラ》公演で使用するチェンバロの選定作業を行った。
今までは、B. ケネディ製作のM. ミートケ・モデル(ジャーマン:2段鍵盤)をお借りしていた。ミートケ・モダルは平野さんが大変お気に入りの楽器で、この楽器になんの不満がある訳ではない。しかし、今回はA. ウッダーソン製作のイタリアンを試してみようということになった。モデルはライプツィヒ・コレクション所蔵の17世紀のイタリアン(製作者不明)で、1段鍵盤、8フィート2列である。
後列(メイン)は、イタリアンの特徴そのままに音の立ち上がりが極めて明瞭で、歯切れが良い。浜離宮朝日ホールであれば、通奏低音をリアライズする右手が今まで以上に客席に届くのではないだろうか。佐藤さんによれば、この楽器は人声のソプラノ、アルト、テノール、バスを模したような、音域による特色があり、特にソプラノとアルトの変化が絶妙とのこと。
前列(サブ)はがらりと雰囲気が変わり、憂いを秘めたような、ものやわらかな音色となる。《テオドーラ》には深刻で沈痛な曲が多いので、そのような曲ではこの前列が大いに効果を発揮するのでは。
W. ピーターズも、ヘンデルのチェンバロ独奏曲に最適な楽器について(劇場作品の通奏低音用としてではないが)、こう述べている:「音域はかなり狭く、一段鍵盤、たぶん、はっきりとしたイタリア的特徴(乾いた、反応の良い音)をそなえたもの」(W. ピーターズ校訂、ウィーン原典版『ヘンデル、クラヴィーア曲集』(UT 50118a、1991)「まえがき」、日本語版、訳:三澤寿喜):音楽之友社(1999)。
ということで、《テオドーラ》ではA. ウッダーソン製作のイタリアンをお借りすることとした。今までより、独奏的性格が強調された通奏低音となりそうで、楽しみである。
折角の定休日にもかかわらず、快くお付き合いいただいた佐藤俊二さんに深く感謝!
三澤寿喜 |