活動記録
HFJ記念年フェスティバルの最後を飾る公演として、ヘンデルの演奏・研究両面における世界最高権威クリストファー・ホグウッド氏を招聘します。選曲はホグウッド氏自身の強い要望によります。オラトリオ《陽気の人、ふさぎの人、中庸の人》は本来3部構成ですが、ヘンデルは第3部が気に入らず、時に第3部を《聖セシリアの祝日のためのオード》と置き換えて演奏していました。今回はその形での上演となりますが、これはヘンデル没後、ほとんど例のない演奏となります。また、オード《聖セシリアの祝日のためのオード》は「ハレ・ヘンデル新全集」から出版が予定されていますが、ホグウッド氏自身が校訂者です。本公演はホグウッド氏の最新の研究成果に基づく校訂譜を使用した世界初演となる予定です。
昨年2009年はヘンデル没後250年記念年でした。世間では、ヘンデル記念年はすでに終了しています。しかし、ヘンデル・フェスティバル・ジャパン(HFJ)は年跨ぎの「シーズン制」ですので、実は今もまだ「記念年シーズン」です。HFJは「記念年シーズン」として2009年4月から2010年2月まで、全4企画を計画していますが、現在HPでご紹介中の「ホグウッド氏招聘公演」はその最後を飾る、最大の企画です。
イギリスの指揮者ホグウッドは1970年代から始まった古楽ブームの中心人物で、モーツァルトの交響曲全曲録音や《メサイア》録音で名を成しました。彼は、バロックや古典派の音楽の「ロマン派的解釈」(言わば「古臭い厚化粧」)をすっきりと洗い落し、原曲本来の美しさを見事に回復させてみせたのです。その清冽なモーツァルトやヘンデルの演奏は世界中の音楽ファンを驚愕させました。研究者としても顕著な功績があり、演奏と研究を極めて高いレベルで両立させている類い稀な音楽家です。
そして、ヘンデルは彼が最も精力的に研究し、かつ、演奏においても最も得意とするレパートリーなのです。今回の演奏も、「ヘンデル没後世界初演」という意欲的なプログラミングです。佐竹由美さん、波多野睦美さん、辻裕久さん、牧野正人さん、4人の独唱者はいずれも皆実力者揃いです。合唱団(キャノンズ・コンサート室内合唱団)はHFJ専属の少人数による精鋭プロ合唱団で、公演の度に批評家から高い評価を得ています(本HP「メディア」参照)。管弦楽(キャノンズ・コンサート室内管弦楽団)もHFJ専属で、国内の優秀な若手古楽奏者を中心として編成されています。
お断りしておきますが、キャノンズ・コンサート(CANNONS CONCERT)という名称は、著名企業のキヤノン株式会社とは無関係です。CANNONSキャノンズはヘンデルに所縁のあるロンドン郊外の地名です。今回の主要演目《陽気の人、ふさぎの人》はイギリスの大詩人ミルトンの詩に基づきます。「陽気」と「ふさぎ」が、イギリスの美しい田園生活や、都会の文化的生活を引き合いに出しながら、論争するという珍しい内容です。ヘンデルは、「田園でさえずる小鳥」、「狩り」、「教会の鐘」、「シェイクスピアを演じる劇場」など、様々な風景を、独唱と合唱をバランス良く組み合わせ、時にユーモアを交えながら、生き生きと描いていきます。
またとないこの機会に、是非、ヘンデルの「知られざる傑作」をお聴きいただければ幸いです。
ヘンデル・フェスティバル・ジャパン実行委員長 三澤寿喜
「没後250年記念フェスティバル」
オラトリオ《陽気の人、ふさぎの人、中庸の人》HWV 55より第1部、第2部
オード《聖セシリアの祝日のためのオード》HWV 76
クリストファー・ホグウッド (指揮)
佐竹 由美
(ソプラノ)
波多野 睦美
(アルト)
辻 裕久
(テノール)
牧野 正人
(バス)
キャノンズ・コンサート室内管弦楽団
2010年2月13日(土)15:00開演
浜離宮朝日ホール
浜離宮朝日ホールのアクセス »
一般発売は9月17日の予定です
一般S=10000円 A=8000円 A席は「完売」しました。
学生=5000円(当日のみ)
企画1とセットの通し券 Sセット:7200円 Aセット:6300円
アレグロミュージック ・・・ 03-5216-7131
東京芸術劇場チケットサービス ・・・ 03-5985-1707
朝日ホール・チケットセンター ・・・ 03-3267-9990
ヘンデル:《陽気の人、ふさぎの人》と《聖セシリアの祝日のためのオード》
すべてのヘンデル愛好家にとって、今年は没後250年記念という特別の祝賀シーズンです。このたび、ヘンデル・フェスティバル・ジャパンの記念シーズンの最後を飾る最大のプロジェクトに関わることができますことを、私は大変嬉しく思っています。
今回、ヘンデル・フェスティバル・ジャパンと私は、大変珍しい構成で、《陽気の人、ふさぎの人、中庸の人》を再現することにしました。それはヘンデルが1743年に上演したもので、このオラトリオの最初の2部、《陽気の人、ふさぎの人》に、《聖セシリアの祝日のためのオード》を連結したものです(この形での上演をヘンデルはその後1回しか行っていません)。ヘンデルは、極めて18世紀的妥協の産物である《中庸の人》を削除することで、詩人ジョン・ミルトン本来の意図に立ち還り、さらに、グランド・フィナーレとして1739年に作曲・初演したドライデンの詩による音楽讃歌《聖セシリアの祝日のためのオード》を加えたのです。
この組み合わせによる公開上演はおそらくヘンデル時代以降、初めてのものとなります。さらに、本公演は、1743年の上演時にコントラルトのシバー夫人のために特別に移調し、書き直されたアリアThe soft complaining fluteの現代初演の場ともなります。この異稿はこれまで出版されたことがなく、今回の演奏会のために私が特別に校訂したものです。このユニークなヘンデル祝賀演奏をお楽しみいただければ幸いです。
クリストファー・ホグウッド
HANDEL: L’Allegro, Il Penseroso and the Ode for St Cecilia
This season is one of special celebration for all Handelians — the 250th anniversary of the composer’s death — and I am particularly pleased to be working with the Handel Festival Japan in the final and biggest project of their memorial season. For this occasion we have chosen to recreate an unusual combination of works that Handel himself devised in 1743 (and repeated only once after that), programming the first two parts of L’Allegro and Il Penseroso, followed by the Ode for St Cecilia; by omitting the very 18th-century compromise of Il Moderato, Handel returned to the original concept of the poet John Milton, and added as a grand finale the words of Dryden in praise of music, which he had set and first performed in 1739.
It will probably be the first time since Handel’s lifetime that this combination has been mounted in public, and we take the opportunity to include a modern premiere of the air “The soft complaining flute” which Handel transposed and rewrote for the contralto Mrs Cibber specially for the 1743 programme; this version has never been published and has been edited specifically for this concert. We all hope that you will enjoy such a unique Handelian celebration.
Christopher Hogwood
HFJクリストファー・ホグウッド氏招聘公演の翌日に昭和音楽大学でホグウッド氏による講演会が開催されます。こちらも奮ってご参加下さい。
昭和音楽大学オペラ研究所
ヘンデル・フェスティバル・ジャパン
音楽を読み解く~作品解釈の過去と現在